課題英文 |
日本語ライティング例 | ||||||||
THE EFFECT OF INTENSIVE TREATMENT OF DIABETES ON THE DEVELOPMENT ANDPROGRESSION
OF LONG-TERM COMPLICATIONS IN INSULIN-DEPENDENT DIABETES MELLITUS Abstract Background Long-term microvascular and neurologic complications cause major morbidity and mortality in patients with insulin-dependent diabetes mellitus(IDDM). We examined whether intensive treatment with the goal of maintaining blood glucose concentrations close to the normal range could decrease the frequency and severity of these complications. Methods A total of 1441 patients with IDDM - 726 with no retinopathy at base line (the primary-prevention cohort) and 715 with mild retinopathy (the secondaryintervention cohort) were randomly assigned to intensive therapy administered either with an external insulin pump or by three or more daily insulin injections and guided by frequent blood glucose monitoring or to conventional therapy with one or two daily insulin injections. The patients were followed for a mean of 6.5 years, and the appearance and progression of retinopathy and other complications were assessed regularly. Results In the primary-prevention cohort, intensive therapy reduced the adjusted mean risk for the development of retinopathy by 76 percent (95 percent confidence interval 62 to 85 percent), as compared with conventional therapy. In the secondary-intervention cohort, intensive therapy slowed the progression of retinopathy by 54 percent (Q5 percent confidence interval, 39 to 66 percent) and reduced the development of proliferative or severe nonproliferative retinopathy by 47 percent (95 percent confidence interval 14 to 67 percent). In the two cohorts combined, intensive therapy reduced the occurrence of microalbuminuria (urinary albumin excretion of ^40 mg per 24 hours) by 39 percent (95 percent confidence interval, 21 to 52 percent), that of albuminuria (urinary albumin excretion of ^300 mg. per 24 hours) by 54 percent 95 percent confidence interval, 19 to 74 percent), and that of clinical neuropathy by 60 percent (95 percent confidence interval 38 to 74 percent). The chief adverse event associated with intensive therapy was a two-to-threefold increase in severe hypoglycemia.] Conclusions Intensive therapy effectively delays the onset and slows the progression of diabetic retinopathy, nephropathy, and neuropathy in patients with IDDM. (N Eng J Med 1993;329:977-86.) |
インスリン依存性糖尿病における長期合併症の発症と進行に対する強化インスリン療法の効果 《要約》背景 インスリン依存型糖尿病(IDDM)患者では、その長期経過中に発症する細小血管や神経系合併症が、QOL障害や死亡率を増大させる大きな原因となっている。我々は、強化インスリン療法を施行して血糖値を目標の正常範囲内に維持させることで、これらの合併症の発症頻度や重症度を低下させうるかどうかについて検討した。 方法 投与開始前に網膜症のない患者726例(一次予防群)および軽度網膜症のある患者715例(二次介入群)の総計1441例のIDDM症例を対象とし、強化インスリン療法(血糖モニタリング下、1日に3回以上注射する方法または注入ポンプを用いる方法のいずれか)施行群および従来のインスリン療法(1日1〜2回注射する方法)施行群の各群にこれらの患者を無作為に割り付けて試験を行った。観察期間は平均6.5年間とし、網膜症およびその他の合併症の発症と進行について定期的に評価を行った。 結果 強化インスリン療法の施行により、従来のインスリン療法と比較して、一次予防群では網膜症発症の補正平均危険率が76%(95%信頼区間:62-85%)低下した。二次介入群では、強化インスリン療法の施行により網膜症の進行が54%(95%信頼区間:39-66%)抑制され、さらに増殖性または重症非増殖性網膜症への進展が47%抑制された(95%信頼区間:14-67%)。 また、両患者群を通じて、強化インスリン療法の施行により微量アルブミン尿(尿中アルブミン排泄≧40mg/24時間)の発現率は39%(95%信頼区間:21-52%)、アルブミン尿(尿中アルブミン排泄≧300mg/24時間)の発現率は54%(95%信頼区間:19-74%)それぞれ低下し、また臨床に明らかな糖尿病性神経障害の発現率は60%(95%信頼区間:38-74%)低下した。強化インスリン療法による主な有害事象として、重症低血糖発作頻度の2〜3倍の増大が認められた。 結論 強化インスリン療法は、IDDM患者に合併する糖尿病性網膜症、腎症および神経障害の発症遅延と進行の予防に有効であった。 |
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★ 総 括 ★ ・IDDMでは治療にインスリンを用いるが、intensive treatmentとは「強化インスリン療法」(Intensive Insulin Therapy)のことを示すので、「強化インスリン療法」とすべきである。またその根拠として、DCCT Research Groupの研究について調査してみると、以下の情報があった。 「DCCT」は、アメリカ糖尿病学会によって発表された、1985年から1993年までの9年間、29施設、IDDMの1441名に対し(平均5.5年/人)実施された大規模な臨床試験。総額で2億ドル(日本円でおよそ210億円)という莫大な費用をかけた、大変有意義な臨床試験となった。NIDDK(National Institute of Digestive, Diabetes and Kidney Diseases「米国立消化器・糖尿病・腎臓病協会」)は、DCCTに参加し、現在生存の患者1420人をさらに10年間フォローアップ中(現在進行中)。「DCCT」 とは(Diabetes Control and Complications Trial「糖尿病コントロールと合併症に関する臨床試験」の頭文字を取った略称) (参考サイト:http://www1.plala.or.jp/HIDEYUKI46HONMA/ASA.html) ・「complication」は長期間糖尿病に罹患しているうちに発症する循環器系等の合併症のことを意味する。 ・development:「合併症」などの「特定の疾病の状態」が起こる場合、通常「発症する」と表現し、一過性の症状や副作用などの場合は「発現する」と表現する。 ・progression:通常、癌などの進行性の疾患が進行する際に用いる。進行性の循環器障害などにおいても「進行」と表現する。喘息などの一時的な発作などに対して「悪化:exacerbation」が用いられ、deteriorationは機能的な悪化を意味する。 ・patient:臨床試験の対象としての患者に対しては「症例」という表現を用いる。 ・Methodsの部分:この試験の計画が明瞭にわかるように記述する。 すなわち、対象患者は網膜症のない群(第1群:一次予防群)と、軽度網膜症を既に発症している群(第2群:二次介入群)の2群が存在し、第1群の患者を対象に「合併症の発症率」を検討し、第2群の患者を対象に「合併症の進行に対する効果」について検討するという目的を明瞭にせねばならない。 また、実際の投薬群も大きく2群に分かれており、A群には「強化インスリン療法」を施行し、B群には「従来インスリン療法」が施行されている。さらに、A群の強化インスリン療法の施行方法はインスリン注入ポンプによる方法と、投与回数を増やす方法の二種類のいずれかが選択されている(1A、1A’、1B、2A、2A’、2Bの6群)。 ライティングのポイントはこれらの内容を正確に、わかりやすく表現することにある。 ・結果の部分:目的と方法をはっきり理解していなければ、結果をうまくまとめて、正確に表現することはできない。目的・方法に対応した表現で、結果を抜け落ちなく、誤りなく、しかも簡潔に解りやすく表現しなければならない。 ・confidence interval:「信頼区間」。「信頼限界」と表現している訳例もあったが、上限または下限を示すのではなく、この場合その範囲が示されているので、信頼区間という言葉を用いる。 ・結論の部分:当初の目的に合致した形での結論にまとめる。 ・insulin:日本語では「インスリン」と呼ぶ。 |