● 課題サンプル3 の ライティング例とその総括-1
課 題 英 文

Central Nervous System and Cerebrospinal Fluid.

The distribution of drugs to the CNS from the blood stream is unique, mainly in that entry of drugs into the CNS extracellular space and cerebrospinal fluid is restricted. The restriction is similar to that across the gastrointestinal epithelium. Endothelial cells of the brain capillaries differ from their counterparts in most tissues by the absence of intercellular pores and pinocytotic vesicles. Tight junctions predominate, and aqueous bulk flow is thus severely restricted.

This is not unique to the CNS capillaries (tight junctions appear in many muscle capillaries as well). It is likely that the unique arrangement of pericapillary glial cells also contributes to the slow diffusion of organic acids and bases into the CNS. The drug molecules probably must traverse not only endothelial but also perivascular cell membranes before reaching neurons or other drug target cells in the CNS. Cerebral blood flow is the only limitation to permeation of the CNS by highly lipid-soluble drugs.

With increasing polarity the rate of diffusion of drugs into the CNS is proportional to the lipid solubility of the nonionized species (see Rall in the symposium edited by La Du et al., 1971).Strongly ionized agents such as quaternary amines or the penicillins are normally unable to enter the CNS from the circulation.
ライティング例 1

中枢神経系および脳脊髄液


 薬物の血流からCNSへの分布は、主にCNS細胞外腔および脳脊髄液への移行が制限されているという点でユニークである。この制限は、薬物が消化管上皮を通過する際に認められるものと類似である。脳の毛細血管は、内皮細胞が細胞内小孔および飲小胞を持たないという点で、大部分の組織の毛細血管と異なっている。CNSでは、毛細血管の内皮細胞は近接した細胞と隙間なく接合していることが多いため、水様液の移動は量的に大幅に抑制される。



この現象はCNSの毛細血管のみに見られるものではない(多くの筋肉の毛細毛管でも、同様の密接な接合が認められる)。また、グリア細胞が独特の配列で毛細血管を取り囲んでいることも、有機酸あるいは有機塩基のCNSへの拡散が遅いことの一因と考えられる。CNS内のニューロンあるいは他の標的細胞に到達するために、薬物分子は多分、内皮細胞の他にも血管周囲細胞の膜を通過しなければならない。脂溶性のきわめて高い薬物の場合、CNSへの通過を制限するのは脳血流だけである。




極性の高い薬物になると、薬物のCNSへの拡散速度は、非電離型分子の脂溶性に比例するようになる(La Duら編集による論文集[1971]の、Rallの報告を参照)。第四アミンあるはペニシリンのように強く電離した薬物は、通常は循環血からCNSへ移行することができない。
★ 総 括 ★

はじめに、今回のテーマである薬物の体内動態について、課題に関連する事項をいくつか挙げてみました。内容を把握するうえで、少しでもお役に立てば幸いです。

・ 吸収されて血流に入った薬物が毛細血管から血管外へ移行する主な経路は、毛細血管内皮の膜を通るか、膜小孔(内皮細胞間の隙間)を通るかである。
・ 一般に、薬物の生体膜通過は受動拡散によるが、その速度は薬物のイオン化(電離)の程度および脂溶性によって決まる。
・ 薬物の脂溶性とは脂質に溶けやすい性質をいい、その化学構造中に極性の基が少ないほど脂溶性が高く、生体膜を単純受動拡散によって通過しやすい。
・ 極性の薬物は水溶性であり、生体膜を単純拡散によって通過しにくい。
・ 単純拡散による吸収は濃度依存性であり、飽和現象は認められない。
・ (特殊な部位を除き)血管内皮細胞の膜小孔には窓(fenestra)と呼ばれる大きな間隙があり、分子量1000以下の薬物はその極性とは無関係に、容易に組織へ移行する。ただし、多くの薬物は血中で血漿蛋白(アルブミン)と結合するので、実際には蛋白結合率が薬物の組織内移行に大きく影響する(蛋白と結合すると組織内に移行できない)。
・ 血液中の薬物が組織に移行しにくい部位として3つの組織があり、それぞれに関門の存在が知られている。1)血液脳関門(blood-brain barrier)、2)血液胎盤関門(blood-placenta barrier)、3)血液睾丸関門(blood-testis barrier)。
・ 血液脳関門について:脳へは脂溶性の高い薬物しか移行しないのが特徴であり、極性(水溶性)の薬物は小分子であっても脳内へは移行できない。脳の毛細血管壁の内皮細胞同士は密着結合(tight junction)しているものが多く、細胞膜小孔がまばら、かつ小さい(普通の内皮細胞は点接合[spot-welding]でつながっている)。

・aqueous bulk flow is severely restricted:については、多量の水分が通過することはほとんどない、水溶液の流出が厳しく制限される、水の大量流出はかなり制限される、などの様々な訳がありました。ここでは毛細血管に隙間がほとんどない=水分が通りにくいという意味で、上のような訳しかたをしてみました。
・ Cerebral blood flow.......:薬物の脂溶性の強さ(電離の程度)がCNSへの透過性にどのように影響するかが説明された部分です。(1)脂溶性が非常に高い薬物は、脳血流に(物理的に)邪魔されることを除けば容易にCNSへと移行できる。(2)薬物の電離が強くなるに従って、その移行速度はthe nonionized speciesの脂溶性に比例するようになる。(3)強く電離した薬物は、ふつうはCNSに移行しない。
(2)のthe nonionized speciesですが、これは薬物分子内にある電荷のない基なのか(ほとんどの方がそのように訳されていました)、電離していない薬物分子なのか(たとえば薬物分子が10あって、そのうち4つが電離していて6つが電離していないというような......)、どうもはっきりしませんでした。

・symposiumには論文集という意味があります。また、editedという言葉から、La Duらはこの論文集を編集した人物だと思います。確信はないのですが、Rallはsymposiumに納められた論文の著者のひとりではないかと思います。

***薬物の脳内への移行は厳しく制限されるのに、生体内物質の血液-脳間の移行は、水溶性であっても効率的に行われていますが、これは単純拡散とは異なる特異的機構が存在するためだそうです。この機構では各物質に特異的なトランスポーターが脳内への取り込み、脳内からの排出を行い、脳の恒常性を維持しているとのことです。(書店で偶然見つけた週間医学のあゆみ[11/9号]という雑誌に、トランスポーターの特集が載っていました。)

                                           (オーガナイザーBグループ YO)
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