京都の寺であってもこの有名な大報恩寺を知っている京都市民は少ないのではないでしょうか。今日はこの大報恩寺を紹介してみましょう。 大報恩寺は通称「千本釈迦堂」と呼ばれる寺で、通称であればほとんどの人が知っているという京都では超有名な寺院なのです。 昨年の十二月八日のこと、大根(だいこ)炊きの行事があるというのでJR京都駅から市バスに乗って行くことにしました。乗ったのは八時半ごろで通勤ラッシュは終わっているはずなのに満員でした。しかも七十歳以上と思われるご老人が異様に多いのです。 千本釈迦堂には千本今出川で降りるのですが、そのご老人達も一斉に降り出しました。当然、向かう先は千本釈迦堂です。
右の写真@をご覧ください。有名寺院でも門は意外と小さいものの列をなして人々が吸い込まれていきます。門をくぐって中に入ると境内は意外と広く、ここで大根炊きが振る舞われています。 大根炊きはお釈迦様が「さとり」を得た日を祝い、鎌倉時代に住職が大根に釈迦の名を梵字(ぼんじ)で書いて厄よけとして信者に配られたのが始まりです。
寒風が吹く中、大鍋の中で煮える大根は左の写真Aのように長蛇の列を作って並ばなければいただくことはできません。 その間、大根炊きの香りが漂い人々の食欲をそそります。 |
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お揚げと共に白い湯気を上げる大根は昆布だしと醤油で二日間も煮込まれて十分に味が染み、箸を通せばスッと手応えもなく刺さり簡単に切り分けられる柔らかさになっています。一杯千円ですが、これを食べれば中風封じ、諸病平癒、健康増進になるといいます。
大報恩寺は鎌倉時代初期の1227年、藤原秀衡の孫の求法義空によって釈迦念仏の道場として釈迦如来像、十大弟子像を安置し創建されました。 義空上人が本堂を建立するにあたり、資材は摂津の材木商の寄進をうけ、建築は京の大工として名声の高かった長井飛騨守高次を棟梁として選びました。 ある日、高次は誤って本堂を支える親柱の四本の内の一本を寸法より短く切ってしまいました。 高次はあちこち探しても、適当な材木は手に入りません。
途方に暮れる高次に妻の阿亀は「切ってしまったことは仕方ないじゃぁないの、いっそ柱を全部短く揃えて桝組(写真D)を入れて高さを合わせればいかがですか」とアドバイスしました。 高次は気を取りなおし、軒や天井をより安定させる桝組を入れて本堂を完成させたのでした。 しかし、阿亀は「妻の知恵を借りて救われたと世間に知れたら、夫の恥になる」と自害して果てました。 亡き妻の顔や優しい心をお面に彫り込み、三本の扇子とともに棟札の上に掲げて、一緒に完成を祝ったということです。このため関西では「おかめさん」が陰で支える家の守り神として上棟の際に屋根裏に収めるしきたりが今も残っています。 |
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室町時代の11年にも及ぶ応仁の乱は京都を焼き尽くしたといいます。 しかし、大報恩寺の本堂だけは奇跡的に残りました。 さらに、応仁の乱以後も、宝永の大火(1708年、14,000軒焼失)、天明の大火(1788年、39,720軒焼失)、元治の大火(1864年、27,500百軒焼失)でも焼失を免れ、洛中の木造建築としては最も古い建物となっています。 そういう由来があるもので、節分の鬼追いの儀は他の社寺とは異なります。 「おかめ節分会」といって境内のおかめ塚の前と本堂で法要が営まれ、番匠保存会による木遣音頭の奉納が行われます。
このストーリーは見た感じ、ざっと以下の通りでしょうか。 鬼が暴れまわり、人々を困らせますが、豆を投げつけられ、一旦はおとなしくなり逃げて行きます。
しかし、突如勢力を盛り返し暴れだします。そこにおかめさんが現れます(写真G)。 「その柔和なる眼差しに鬼たち心も萎えてへろへろと座り込み」(謡曲)ます。 鬼は改心して打ち出の小槌をおかめさんに差し出し去って行きます。 この後はどこの社寺でも行われる福豆まきです。 衛生上の観点からか撒かれる豆はピーナッツです。地面に落ちたものも殻を剥けばその場で福がいただけます。 |
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この日のおかめ像をご覧ください(写真H)。 普段は前出写真のように普通のブロンズ像のように見えますが、節分のときは着物を着て、野点傘を差してもらっています。 関係者の粋な計らいではありませんか。 正月早々、大報恩寺の先月の行事と来月の行事を紹介いたしました。 節分の行事は午後三時から始まります。 京都観光などでお出かけの際にはお役立てください。 なお、近くには北野天満宮、千本えんま堂などもございますので併せて訪問されてはいかがでしょうか。 |
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場 所:京都市上京区今出川通七本松上ル溝前町 アクセス:市バス「上七軒」または「千本今出川」下車、徒歩5分 京都駅前から 市バス50号 、206号 三条京阪前から 市バス10号 四条河原町から 市バス10号、51号、203号 四条大宮から 市バス55号、203号、206号 |
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(遠藤真治記) | |||||
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